Mosquito
2020.02.23
Mosquito:「蚊」――
取るに足らない無意味な音と存在。忌々しい小さな羽音がこだまする。
LYRIC
Mosquito
素足の指まで愛するガールフレンド
ふと蚊に刺されたと歯に噛めば
生まれたての仔犬みたいね
愛に絡まり蠢くブランケット
布針に糸を通せない指で世界を笑う
聴こえない calling
Tell me
正気になりたくて
棘もいらない夜に血を流せたなら
喉が渇いて
また飲み混むタブレット
例えば、ガスリンスタンドを爆破して
取り残された2人なら
気も散らず 愛し合えるさ
かといえばイエスが何歳になったって
冷蔵庫の光が漏れる 闇の中で
キスするように
Tell me
正気になりたくて
掴まれない夜に足を踏み外せたなら
喉が渇いて
狂い藻がく夜に溺れてしまえたなら
救い出してくれ
滴る命に歯を立てた
跡形もないぜ
COLUMN
悲しい、寂しい、苦しい、そんな歪んだ言葉ですら、もう物語にはならない。
果てしなく広がったSNSの中で、溢れるように吐かれた言葉は、また別の言葉の渦にもみくちゃにされ、成す術もなく埋もれていく。そこに残るのは、忌々しい感情だけ。
現代では隣人でもない、ありとあらゆる他人の言葉に出くわしてしまう。それは自分から求める事もあれば、勝手に向こうから飛びついて来るものもある。そうしている間に、僕たちにとってのリアルは遠のいていく。
誰もが、理解されない悩み、伝えきれない葛藤、解決できない苦しみを抱えている。でもそんな歪みがいつしか当たり前になってしまった日常世界で、その声は誰の目にも届くけど、誰の心にも届かなくなってしまった。そんな今、どうやって生きていくのが正解だろう?
不意に、破滅的な言葉が心から漏れることもある。「いっそ、全てが消えちまえば良いのに」。それは普遍的とも言える、絶望の声。自分が社会の中でなんの価値も生み出していない、そんな感覚から出る、喪失の声。
大きな社会から少し血を吸い取り生きながらえるだけの、小さな、忌々しい蚊。それが自分ではないかと、感じてしまう。その一匹の悲痛な心の叫びを、曲全体に染み込ませています。誰が狂気で、誰が正しいのか。世界は悪なのか、自分がバカなのか。そんな世界から脱出する方法はあるのか。あるいは、いつか跡形もなく消え去るだけなのか。