MV 監督
仁宮 裕
仁宮裕
1983年、島根県生まれ、東京都在住。姫路工業大学卒業後、ニューシネマワークショップにて映像製作を学ぶ。
フリーランスの映像作家としてミュージックビデオ、映画などの演出、撮影、編集を手掛ける。
仁宮裕
1983年、島根県生まれ、東京都在住。姫路工業大学卒業後、ニューシネマワークショップにて映像製作を学ぶ。
フリーランスの映像作家としてミュージックビデオ、映画などの演出、撮影、編集を手掛ける。
Payao×仁宮 裕
■ Payaoの楽曲・活動について
PororocaのMVを撮る前に、Pororocaの制作過程や活動の方針を聴いて、この人となら「想い」を反映させられるMVができるんじゃないかと感じました。
普段MVを作るときは、インストバンドを撮ることが多かったからもしれませんが、何をどう撮るか任せられる作品が多く、曲を聴いて0から考えることが多かったんです。でもPayaoさんの場合は、しっかり曲への想いを話してもらえたので、「想い」を受けとった上でそれをどう反映させるかって考えちゃうんです。それが面白いなぁって、しかも本当に深く考えていて、何も考えていない人にはこの曲は作れないよなって思いました。Pororocaのネーミングセンスや歌詞にしかり、なんの意味もなく言葉を選ぶことをしない人だって、だからこそ、その深みを出そうと、こちらが考えてくるMVへのこだわりや面白さを絶対わかってくれる人だ!って思ったんです。
そしてPororocaのMVは本当に上手くいきました。モデルさんとPayaoさんだけが正の動きをしているんですが、MVを作っている側の僕らは逆再生で動いていて、「実は撮る側の僕らでさえも流されるままに生きてるんじゃないか」っていう自虐も入れてます。これからは逆らって自分で切り開いていかなきゃいけないんだ、という気持ちを込めて作りました。
Payaoさんの活動についてですが、漫画村にしかり、Anitubeにしかり、これからコンテンツが無料で消費される時代はいつか来ると思います。そんな中、Liveや通常の販促方法を取らないPayaoさんの活動が本当に気になります。
Payaoさんの音楽活動の行く末次第で、今後の音楽業界がガラッと変わるんじゃないかとさえ思っています。それくらい新しい可能性を提示してくれる影響力のあるアーティストだと私は思います。
本当にこれからが楽しみです、応援しています!
■以下Payao×仁宮裕 対談
Payao(以下P):MVの監督ってどうやってなるのものなんですか?やっぱり小さい頃から映像に興味があったんですか?
仁宮裕(以下仁):私は島根県出身で、すごい田舎に生まれたんです。田舎だから全く文化的なものがなかったんですよ。映画館も一件もないし、街にコンビニさえも一件しかなくて、さらにそのコンビニも中学生の時に近所の中学生の万引きがひどくて潰れるっていう笑
P:凄いですね!ではいつから映像に興味が出てくるんですか?
仁:高校で初めてラジオを聴くようになって、テレビに出ないアーティストの曲を聴くようになりました。でもその時点ではそこまでかなぁ、元々めちゃめちゃ安定志向だったんですよ。しっかりした職業につきたかったし。そのために頑張って勉強して大学も進学校に行きました。
P:大学までは自分が映像監督になるとは全く思っていなかったんですね。大学で都市圏に出てから何かあったんですか?
仁:そうなんです。大学で都会に出てから、それまでラジオでしか聞けなかったアーティストをタワレコで夢中になって聴いて、あとTSUTAYAでバイトをしていたので、バイト割引で安く借りて毎日何本も映画を観てって生活をずっと続けてました。どんどん文化的なものにハマっていった時期ですね。
P:文化への渇望があったんですね。そこから自分でも映像を作ろうとしたんですか?
仁:いや、全然そんな気はまだなくて。ただ何故か就活をするときになって、死ぬほどしたくないなって思ったんです。普通に会社員になるのが嫌だなーって。とはいってもどうしようって思って、、そのときバイトとしてTSUTAYAで3年働いていたんです。既にバイトの範疇を超えた仕事もしていて、レンタル業界も詳しくなっていたので「TSUTAYAの本社CCCに就職できないか」って社員の方に相談したんですよ。そしたら「絶対きついからやめとけ!お前映画好きなんだから映画業界行けよ!」って言われたんです。特に深い意味ないと思うんですけど、その時の自分にはしっくりきたんです。あーっ!いいね!って。笑
P:へー!そこで映画業界で生きようって初めて思うんですね。
仁:そう、それで映画業界入りたくなったんですけど、もう既にに就活のエントリーが終わっていて入れなくて。来年もう一回受け直そうと思うと、学部も理系で映画と関係なくしっかりした知識もないので、一度映画や映像の勉強をしようと思ったんです。
P:就職対策としてってことですよね?
仁:そうです。
P:まだこの時は普通に就職しようとしてるんですもんね、その後どうなるんだろう。
仁:それで映画の勉強ってどうやるんだ?ってなって、ネットで調べたら、東京で1年間40万円で映像が学べるワークショップがあって、安い!これにしよう!って決めて、みんなが卒論書いてる中、お金貯めて申し込んで映像を学び始めたわけです。
P:そこから就職じゃなくて作る方に興味がでるんですか?
仁:そうですね。映画業界に勿論就職もしたかったんですけど、業界の話も徐々に入ってくるようになって、かなり厳しいって話も聞いて、尻すぼみして迷いはじめて、、そんな中、ワークショップで自主映画を作ったりしていたら、作る方にがっつりハマっていったんです。丁度そのときに家のプレステ2が壊れて、代わりにビデオカメラで毎日素材撮って、家でエフェクトかけて編集してって遊びを一人でやり始めたんですよ。プレステ2が壊れたので、それしか家にエンターテイメントがなくて、でもそれが楽しくて笑
P:そこから映像制作にハマっていくんですね!
仁:はい、昼間は小さい映画館で映写技師のバイトしてました。六本木ヒルズで流したけどもうお客さんが入らなくなったお古の超大作や、低予算の新作、箔をつけるために映画館で放映したって言いたいだけのVシネとか、そこで色々見れたんですよ。それで質の高い映像はなぜ良いのか、低いのはなぜ低いのか差が分かるようになって、良いやつの良い部分を分析し、家で真似して編集してってのを毎日やってましたね。
P:本当に映像漬けの毎日だったんですねー、最初に作品を外向けに作ったのはいつですか?
仁:知り合いのDJのイベントに行って、その時にたまたま知りあったMCの人と酔っ払った勢いで意気投合して、「俺のMV作ってくんない?」って言われて、OK!って言ったら本当に次の日連絡が来たのでつくってあげたんです。笑 それが初めてのMVですね。そこからまた別の人を紹介されて2作目のMV。またそこから「こんなレーベル立ち上げるからMV作って」って言われて、、少しずつ広がっていきました。最初は全部無償でやってましたよ。
P:最初は無償ですかー凄い、でもそこから今の仕事に発展していくんですよね。
仁:はい、MV作った方々に関連する流通会社から声がかかって、少しずつ仕事が回ってくるようになって、MVってお金稼げるんだ!ってそこで始めて知って。2011年にbohemianvoodooのバシリーさんにMVを頼んでもらえて、それがPlaywrightの一作目で[Adria Blue]を作りました。そこから割と一気に頼まれるようになって、どんどん広がって、そしてfox capture planのMVを作らないかって言われて。当時はキャリアもなかったのでとにかく一個一個丁寧に仕事をしようと思ってましたね。
[Adria Blue]
P:そこからは順風満帆ですね!MV監督で、どこにも属さず最初からフリーランスというのも珍しいんじゃないですか?
仁:普通は制作会社に入るんですけど、丁度時代が良かったんです。テレビが地上波から地デジに変わったじゃないですか、そのときに地上波の画質ってSDっていうんですけど、SDからフルHDとかに変わったんです。それに伴ってカメラの性能も一気に上がって、アマチュアでもプロの機材の質にどんどん迫っていって、民製品でもそれなりの作品が撮れるようになったんですよ。だから一人でも良いものが作れたんです。
P:音楽業界と似てますね、DTMの普及でプロとアマチュアの境目が曖昧になりましたからね。いろんなソフトが出て好きなだけ音にも凝れるようになりましたし。仁宮さんは映像制作に対するこだわりなど何かはありますか?
仁:以前DJ NOZAWAさんと知り合って、MVを作ることになったんです。その編集のやりとりをしていた際に、「個人でも、編集だったら頑張れるでしょ?低予算だったら個人の努力を詰め込む、制作会社が面倒だって思うことをいかにやれるかだ」って言われて、なるほど!って思って。それからめちゃくちゃ細かくカットを刻むとか、ここまで作りこむのかってくらい面倒な作業もやるようになりました。それが個性になっていつの間にかアイデンティティになって、人の目に止まるようになったんだと思います。
P:確かに、仁宮さんの魅せ方は独特でかっこいいなぁって思います。努力の賜物なんですね。今後の目標などはありますか?
仁:現状は、当初始めたときにこうなったらいいなぁって、思っていたものよりずっと上手くいっていると思っていて、水物みたいなものかとも思うんですけど、一方でまだ現状に満足してないし、技術面でも監督面でももっと面白いものが作りたいと思っています。一つ一つ良い作品を作っていきたいんですよね。もっと良いものを作りたい。ありがたいことに撃てば返ってくる環境なのでどんどん新しい作品を作っていきたいです。今はまずそれですね。
P:作品軸の目標なんですね、楽しみです!これからも応援しています!